■筋萎縮性側索硬化症とは

筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、運動ニューロンが変性・脱落することにより、進行性に筋力低下と筋萎縮を呈する神経変性疾患です。四肢の筋力低下や筋萎縮に加え、構音障害・嚥下障害・呼吸障害が進行性に出現し、日常生活動作(ADL)の低下を招きます。現在のところ根本的な治療法は確立されておらず、症状緩和や生活の質(QOL)維持を目的とした支持療法が中心となります。

■筋萎縮性側索硬化症に対する訪問マッサージの施術について

ALSにおいては、筋緊張の亢進や関節拘縮、循環障害が二次的に生じやすく、疼痛や可動域制限を伴うことが少なくありません。訪問マッサージでは、以下を目的として施術を行います。

  • 関節可動域維持・拘縮予防:ストレッチングや関節モビライゼーションを用い、関節の柔軟性を保持する。
  • 筋緊張の緩和:軽度の持続的圧迫や軽擦法を中心に行い、筋硬直やけいれんの軽減を図る。
  • 循環改善:血流・リンパ流を促進し、浮腫や冷感の軽減を目指す。
  • リラクゼーション・心理的安定:適度な接触刺激により、患者様の安心感や精神的安定を支援する。

施術は進行度や全身状態に応じて負担を最小限に抑え、呼吸状態・嚥下機能への配慮を行いながら安全に実施することが求められます。

■実際の症例

神戸市中央区 G様(70代・男性)

ALSの診断を受け、上下肢の筋力低下と筋緊張亢進が進み、移動・体位変換に強い介助を要する状態でした。訪問マッサージを週2回導入し、四肢関節の他動的ストレッチ、軽擦法を中心とした施術を実施。継続により、肩関節や股関節の可動域制限が緩和され、ベッド上での体位変換が容易となり、褥瘡予防や介護負担の軽減に寄与しました。

■ご利用者様の声

「施術を受けると筋肉のこわばりがやわらぎ、体が軽く感じられるようです。定期的に来ていただけることで安心感があり、表情が穏やかになったと思います。療養生活の中で大きな支えになっています。」