■慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)とは

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy:CIDP)は、末梢神経の髄鞘が自己免疫反応により障害される慢性進行性の炎症性ニューロパチーです。代表的な症状は対称性の四肢筋力低下、感覚障害、腱反射低下であり、進行は8週間以上持続することが診断基準の一つとされています。自然経過では再発・寛解を繰り返す例や慢性的に進行する例があり、歩行障害や上肢機能障害によりADL(日常生活動作)に大きな影響を及ぼします。

■慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)に対する訪問マッサージの施術について

CIDPの治療は免疫グロブリン療法、ステロイド、免疫抑制剤などの薬物療法が主体ですが、リハビリテーションや補助療法による機能維持も極めて重要です。訪問マッサージでは以下のような効果を目的とします。

  • 筋緊張の調整:筋力低下に伴う二次的な筋緊張や痙縮を緩和
  • 循環改善:血流・リンパ還流を促し、浮腫や冷感の軽減を図る
  • 関節可動域の維持:長期臥床や運動制限により生じる拘縮の予防
  • 感覚障害の軽減補助:しびれや異常感覚に対する症状緩和的アプローチ

薬物治療による疾患コントロールと並行して施術を行うことで、廃用性変化の予防、転倒リスクの低減、QOL(生活の質)の維持・向上を支援します。

■実際の症例

神戸市 T様(50代・女性)

T様はCIDPによる全身性の筋力低下と神経障害が生じ、ベッド上でほぼ寝たきりのような状態でした。神経障害によって関節の拘縮も生じており、施術ではまず関節の可動域を回復することを第一としました。週2回の訪問マッサージを根気強く継続し、関節の可動域改善および端座位をしばらく維持できるまで回復されました。
回復への強い意志をお持ちですので、引き続き日常生活の自立へ向けて取り組んでいます。