■重症筋無力症とは

重症筋無力症(Myasthenia Gravis: MG)は、神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体に対する自己抗体などが原因で、神経から筋肉への興奮伝達が障害される自己免疫性疾患です。特徴的な症状は、活動によって増悪し、休息により軽快する筋力低下(易疲労性)であり、眼瞼下垂や複視などの眼筋症状、嚥下障害や構音障害、四肢・体幹筋の脱力が見られます。重症例では呼吸筋麻痺を来す「ミアスセニック・クリーゼ」に至ることもあり、日常生活動作の著しい制限を招きます。

■重症筋無力症に対する訪問マッサージの施術について

訪問マッサージでは、神経筋伝達障害そのものを直接改善することはできませんが、長期にわたる筋力低下や活動性低下に伴う二次的障害(筋緊張異常、関節拘縮、循環障害、浮腫など)に対して介入します。施術は過度な筋疲労を避けるために低強度かつ短時間で行い、緊張亢進した筋群を緩和し、関節可動域(ROM)の維持・改善、末梢循環促進を目的とします。また、呼吸筋や体幹支持筋への負担を考慮しながら全身調整を行い、患者のADL(Activities of Daily Living)およびQOL(Quality of Life)の向上に寄与します。

■実際の症例

神戸市長田区 T様(60代・女性)

T様は数年来の重症筋無力症により下肢筋力の低下と全身倦怠感が顕著で、屋外歩行が困難となっていました。訪問マッサージでは、下肢の静脈還流促進を目的とした軽擦法、関節可動域訓練を中心に実施。さらに、長時間の臥床に伴う筋緊張部位に対して局所的な筋緩和操作を加えました。継続施術により下肢浮腫の軽減、立位保持時間の延長がみられ、生活動作の安定性が改善しました。

■ご利用者様の声

「筋力の回復は難しいと感じていましたが、施術を続けることで足のむくみや重だるさが減り、動きやすくなりました。身体への負担を考えて調整してもらえるので、安心して施術を受けられます。」